人間にとって、生き物にとって、水は欠かせない存在です。
私たちの体の70%近くが水でできていることからも分かるように、すべての生命は水のなかから生まれました。
海や川、湖などの美しさは、生命の豊かさそのものをあらわしているようです。
しかし、この水を取り返しのつかないほど汚してしまうのが、水質汚染です。
かつて日本では、工業排水によってさまざまな化学物質が川や海に流れ出ることが大きな問題となりました。
それが、熊本県で起きた水俣病や、富山県で起きたイタイイタイ病などの公害です。
それぞれ、メチル水銀やカドミウムが排水とともに流れ出し、
それをふくんだ魚や米、野菜などを食べた地域住民に大きな被害をもたらしました。
このように、水質汚染のもっとも怖い点は、私たちが何気なく口にしてしまう水が汚染されてしまうというところです。
それだけ、生活にとても密接な環境問題ともいえるでしょう。
工業以外にも、かつてはゴルフ場の芝生に用いられる肥料や農薬による水質汚染も問題となったことがあります。
しかし、これらの水質汚染は「水質汚濁防止法」や「農薬的農薬取締法」といった法律によって厳しく監視されることになり、
現在ではそれほど問題ではなくなっています。
じつは、今もっとも水質汚染を引き起こしているのは、家庭からの排水なのです。
キッチンやバスルームで使う洗剤や、料理に用いる油。このようなものが排水されることで、
水中のプランクトンが異常増殖します。すると酸素が足りなくなってしまい、魚などの水中生物が死滅してしまうのです。
これを、赤く濁った水の色から「赤潮」と読んでいます。
このような水質汚染が、じつは現在では全体の60%も占めているのです。
しかし、工業排水と違って生活排水には規制する法律はありません。
だからこそ、水質汚染を防ぐためには、私たちひとりひとりの心がけがとても大切になってくるのです。
では、いったいどのような対策を取ればよいのでしょうか。
まず、洗剤は無駄に多く使わない、できるだけ天然成分を用いたものを選ぶ。
そして油はそのまま流さずに、拭き取るか、固めて捨てる、といったことが挙げられます。
水は、循環することできれいになっていく自浄作用を持っています。
しかし、たとえば牛乳1本を流してしまうと、それをもとに戻すにはバスタブ10杯分もの水が必要になってしまいます。
ですから、とにかくできるだけ汚れを水に流さない、流すものはできるだけ自然に分解されやすいものにする。
そして、そもそも水自体をあまり無駄遣いしない、といった意識が必要となってくるのです。
日本人にとって、水と安全はタダ、という言葉があります。
あまりに身近すぎるため、かえってその大切さを忘れがちになっているのも事実でしょう。
しかし、この安全や便利さを守っていくためにも、普段からの心がけを大切にしていただきたいのです。